ネットのサービスを解約しようとして、

「解約ってどこ?」

となったことが何度もある。

登録するときは、でっかいボタンがある。

「今すぐはじめる」

とか。

なのに解約しようとすると、急に見つからない。

設定を開いて。

アカウントを開いて。

さらにその下のページへ行って。

やっと見つけたと思ったら、ものすごく小さく書いてある。

昔はそこからさらに、

「本当に解約しますか?」

「こんな機能が使えなくなります」

「今ならこの価格で継続できます」

みたいに、すごく引き止めてくるサービスもあった。

解約できないわけじゃない。

でも、

できれば見つけてほしくなさそう。

あれ、結構イヤだった。

最近知ったけど、こういう「なんかずるいな」と感じる画面には、

ダークパターン

という名前があるらしい。

ダークパターン、日本でもちゃんと問題になってきた

2026年、日本でもダークパターンをめぐる議論がかなり具体的になっている。

消費者庁では、ネット上の契約や解約のあり方について検討が進められていて、8月24日にはダークパターンへの規律も含む中間取りまとめ案が示された。

まだ、

「このUIは今日から違法です」

という話ではない。

ただ、日本でもこういう誘導を、もう少しちゃんとルールとして扱おうという方向には動いている。

そもそもダークパターンというのは、ものすごくざっくり言えば、

使う人の意思とは少し違う方向へ、うまく誘導するようなデザイン。

なお、消費者庁も、ダークパターンは法令上の確定した定義がなく、多種多様で完全な分類が難しいとしている。

たとえば、

「あと10分で終了!」

と急かす。

本当は必要な料金を分かりにくいところに置く。

定期購入だと気づきにくくする。

そして、

やめたいのに解約方法を見つけにくくする。

名前を知らなかっただけで、

見たことあるなあ。

と思うものが結構ある。

76.2%が「見たことがある」

消費者庁が2026年6月に公表した調査では、76.2%の人が何らかのダークパターンを「見たことがある」と答えている。

過去1年間に何らかのダークパターンを経験した人も37.5%だった。

思ったより多い。

というより、

たぶん普段から見すぎていて、

「これダークパターンだ」

なんて考えずに使っているものもありそう。

私自身、昔解約ボタンを探し回ったときも、

「これはダークパターンだ!」

とは思っていなかった。

ただ、

なんでこんなに分かりにくくするんだろう。

とは思っていた。

今は、自分も作る側になった

昔と少し違うのは、

今は私自身もWebアプリを作っていることだ。

そうすると、

「そんな嫌なUI、やめればいいじゃん」

だけでは終わらなくなった。

ボタンは目立たせたい。

押してほしいところは分かりやすくしたい。

途中で迷わないようにしたい。

作品なら使ってほしいし、シェアしてもらえたらうれしい。

これ自体は、たぶん普通のことだと思う。

むしろ何をすればいいのか分からない画面より、

「次はここだよ」

と教えてくれる画面の方が親切だ。

人を動かすUIが悪いわけじゃない。

じゃあ、

どこから“ずるい”になるんだろう。

本当にその人のためなら、後押ししてもいいと思う

たとえば、

「あなたにはこっちがおすすめです」

と目立たせる。

私は別に、それだけなら悪いと思わない。

本当にその人に合っていて、

選ぶのが楽になるなら、むしろ親切かもしれない。

ボタンを分かりやすくするのもそう。

入力ミスを教えるのもそう。

次に何をすればいいか示してくれるのもそう。

ユーザーがやりたいことを、

少し楽にしてくれる。

それならいい。

私が「ずるいな」と感じるのは、

勘違いさせたり、その人が本来したかったことから外れさせたりしたとき

なんだと思う。

解約したい人に、解約ボタンを見つけさせない。

一度だけ買いたい人に、定期購入だと気づきにくくする。

考える時間が欲しい人を、「あと3分」と焦らせる。

そこまでいくと、

ユーザーを手伝っているというより、

サービス側の都合のいい方向へ動かしている。

似ているようで、結構違う。

使う側なら分かるのに、作る側になると分からなくなる

使う側だったときは、結構すぐ分かった。

解約ボタンがものすごく小さかったら、

「いや、これ絶対わざとでしょ」

と思う。

広告の閉じるボタンが見つからなかったら、

「普通に閉じさせてよ」

と思う。

でも、自分でWebアプリを作るようになってみると、

少しだけ怖いなと思うことがある。

作る側にいると、

「このボタンをもっと押してもらいたい」

「ここで離脱してほしくない」

「継続率を上げたい」

みたいに、どうしても数字や導線を見るようになる。

それ自体は必要なことだと思う。

でも数字ばかり見ていると、

その画面を使う人がどう感じるかが、だんだん後ろに回ってしまう。

使う側なら一瞬で、

「これ嫌だな」

と気づけたことなのに。

作る側になると、

「数字が良くなった」

の方を先に見てしまう。

たぶん怖いのはそこなんだと思う。

勘違いさせたり、

やめたい人をわざと迷わせたりする設計は、

やっぱり嫌だ。

だからこそ、

作る側に回ったときほど、使う側だった自分の感覚を忘れないようにしたい。

数字が上がったときに、

「これ、ユーザーにとっても良くなったんだっけ?」

と一回考える。

そのくらいは、ずっと持っていたい。

数字だけなら、そっちの方が良くなるのかもしれない

強いボタンにしたら、クリック率は上がるかもしれない。

何度も引き止めたら、解約率は下がるかもしれない。

期間限定っぽく見せたら、その場で申し込む人は増えるかもしれない。

実際、消費者庁の実験でも、ダークパターンを含む画面では、事業者側にとって望ましい選択がされやすくなる傾向が確認されている。

解約場面でも、ダークパターンがない場合より「解約した」割合が低くなる傾向があった。

つまり、

効くことは効くんだと思う。

でも使う側だったときの、

「なんか嫌だな」

も覚えている。

数字が上がったとしても、

その代わりにそのサービス自体を嫌いになられたら、

あんまりうれしくない。

だから自分で何かを作るときは、

できる限りそういう設計は避けたいと思う。

「数字が良くなった」と「サービスが良くなった」は違う

たとえば、解約率が下がった。

数字だけ見たら、

やった。

となる。

でもその理由が、

解約ボタンをめちゃくちゃ小さくしたから。

だったら。

それって本当に、

サービスが良くなったんだろうか。

たぶん違う。

数字は良くなった。

でも使う人にとっては悪くなった。

数字で見えるものは分かりやすい。

クリックされた。

継続した。

購入された。

でも、

「なんかこのサービス嫌だったな」

は、Analyticsにはあまり出てこない。

作る側になると、どうしても見える数字に目が行く。

だからこそ、

見えない方も意識しないといけないんだろうなと思う。

本当は、規制なんてなくてもいい方がいい

今回、日本でもダークパターンについて制度的な議論が進んでいる。

個人的には、

本当はサービスを作る側の良識に任せられる方がいいと思う。

法律で、

ここに解約ボタンを置きなさい。

この表示は禁止です。

この誘導はダメです。

と全部決めなくても、

作る側が普通に、

「これ、使う人からしたら嫌だよな」

と考えて避けられれば、それでいい。

でも、

実際には解約方法が全然見つからないサービスもあった。

勘違いさせるような表示もある。

そういう現実を見ると、

ある程度ルールが必要になるのも仕方ないのかもしれない。

本当は、

規制される前にやらなくなっていてほしかった。

なんとなく、

ちょっと寂しい話ではある。

入りやすさと同じくらい、出やすさも大事なのかも

登録が簡単なのは好きだ。

面倒な入力がなくて、

すぐ使えるとうれしい。

でも、

やめたいときに普通にやめられるサービスも好きだ。

入ってほしい。

使い続けてほしい。

作る側なら当然そう思う。

でも、出ようとしている人の前に、

わざわざ迷路を作らなくてもいい。

そう考えると、

出口がちゃんと見えることも、使いやすさのひとつなのかもしれない。

ダークパターンという言葉を知って、

昔、解約ボタンを探し回っていたことを思い出した。

登録するときは、

あんなに大きなボタンだったのに。

解約するときだけ、

急に小さくなる。

やっぱりあれは、

ちょっとずるい。