恋人にご飯を奢ってもらった。

家事をしてもらった。

友達に相談に乗ってもらった。

誰かが荷物を持ってくれた。

そのときは「ありがたいな」と思っていても、日常の中では意外とすぐ忘れてしまいます。

「つなつむ。」は、恋人・家族・友人などとの「してもらったこと」「してあげたこと」を記録して、人とのつながりを可視化するWebアプリです。

奢った・奢られた金額だけでなく、家事、送迎、相談、手伝い、ちょっとした親切まで残せます。

そして、記録した人や出来事は、円と線でできた「自分の世界」として少しずつ形になっていきます。

ただし、人間関係に点数はつけません。

誰が一番自分に尽くしているかをランキングにすることもありません。

なぜ、そんなアプリを作ったのか。

始まりは、もっと単純なものでした。

最初に欲しかったのは「奢った・奢られた」の記録だった

きっかけは、恋人とのお金のやりとりでした。

一緒にいると、ご飯を奢ったり、逆に奢ってもらったりすることがあります。

毎回きっちり割り勘にするわけではないので、

「前回は出してもらったから、今日は自分が出そう」

くらいのバランスが分かったら便利だなと思ったのが始まりです。

だから最初は、かなり細かく金額を記録したいと思っていました。

どちらがどれくらい出したのか分かれば、次に自分が奢るかどうかも決めやすい。

最初に考えていたのは、言ってしまえば「公平にするための記録アプリ」でした。

でも、奢った金額を記録するだけなら既存のアプリでもできる

考えている途中で、一度立ち止まりました。

奢った、奢られた。

誰がいくら払った。

それを記録するだけなら、既存の家計簿や割り勘アプリでもできます。

せっかく自分で作るなら、もう少し違うものにしたい。

そこで考えました。

人に「してもらうこと」って、本当にお金だけだろうか。

たとえば、家事をしてもらう。

車で送ってもらう。

相談に乗ってもらう。

何かを少し手伝ってもらう。

疲れているときに飲み物を買ってきてもらう。

逆に、自分が誰かにしてあげることもあります。

お金は数字として残りやすい。

でも、こうした日常の小さなやりとりは、ほとんど何も残りません。

何度も続けば、それがいつの間にか「当たり前」になってしまうこともあります。

だったら、お金だけではなく、そういう出来事も一緒に残せたらいい。

そこから「つなつむ。」の方向が変わり始めました。

「つなつむ。」で記録できること

つなつむ。では、大きな出来事だけを記録する必要はありません。

たとえば、

  • ご飯をごちそうした・してもらった
  • 家事をした・してもらった
  • 車で送った・送ってもらった
  • 相談に乗った・乗ってもらった
  • 仕事や作業を手伝った・手伝ってもらった
  • 買い物や生活のちょっとしたことを助けた・助けてもらった
  • ドアを押さえてもらった
  • 店員さんに親切に対応してもらった

そんな小さなことで大丈夫です。

むしろ、普段ならそのまま忘れてしまいそうな出来事を積極的に残してほしいと思っています。

人との関係に、点数をつけるのは違う気がした

記録できるものをお金以外にも広げると、次の問題が出てきました。

それをどう比べるのか。

3000円のご飯をごちそうしてもらった。

家事を一回してもらった。

一時間相談に乗ってもらった。

駅まで送ってもらった。

これらを同じ物差しで測ることは、たぶんできません。

家事一回は10点。

相談に乗ったら20点。

そんな仕組みにすると、人との関係そのものを採点しているように感じました。

それは、なんか違う。

誰が一番自分に尽くしてくれているかランキングを出すのも違う。

「最近してもらってばかりなので、そろそろ返しましょう」

とアプリから催促するのも違う。

人との関係は、人によって違います。

だから、つなつむ。では人にも、関係にも点数をつけません。

お金は差額まで見せる。でも「得・損」は決めない

一方で、お金の情報を完全になくしてしまうと、最初に欲しかったものから離れすぎてしまいます。

そこで、お金については、

  • 自分から相手へ、いくら
  • 相手から自分へ、いくら
  • その差額はいくら

という現在の状態までは分かるようにしました。

ただし、

「あなたが損しています」

「あと3000円返してもらいましょう」

とは言いません。

事実は見せる。でも、その意味までは決めない。

差額を見て、

「今日は自分が出そうかな」

と思う人もいる。

「これくらいなら別に気にしない」

と思う人もいる。

それでいいと思っています。

つなつむ。がやりたいのは、行動を指示することではありません。

まず、今どうなっているかに気づけること。

その先は、その人自身に任せたい。

人間関係を「円と線の世界」にした

次に悩んだのが、記録したものをどう見せるかでした。

履歴を一覧に並べるだけでも、アプリとしては成立します。

でも、それだけでは少し味気ない。

人との「つながり」というものを考えているときに、

広く考えれば、つながりって自分自身の中にあるひとつの「世界」なんじゃないか。

と思いました。

そこで、つなつむ。では、自分を中心に人を円として配置し、つながりを線や出来事として表現する形にしました。

最近よく関わっている人。

少し前によく関わっていた人。

新しく関わった人。

そうした人たちが、自分の周りに少しずつ現れていきます。

できるだけ多くの人の名前を表示したかった

開発途中では、名前の表示も変更しました。

最初は画面をすっきり見せるため、表示する名前をかなり絞っていました。

でも、関わる人が増えてくると使いづらい。

そして、それ以上に、

「自分はこの人たちとつながっている」

という感覚が弱くなってしまいました。

円が20個並んでいることより、

そこに実際の人の名前が並んでいること。

そのほうが「20人」という数字ではなく、20人とのつながりとして感じられます。

だから、読みづらくならない範囲で、できるだけ多くの人の名前が見えるようにしました。

これは単なるUIの調整というより、つなつむ。で見せたかったものに合わせた変更でした。

忘れたくないのは、案外「小さなこと」なのかもしれない

つなつむ。では、立派な出来事を残さなくていいと思っています。

ドアを押さえてもらった。

少し荷物を持ってくれた。

店員さんが感じよく接してくれた。

疲れているときに家事をしてもらった。

そんな、小さな出来事でいい。

嫌だったことは、何もしなくても長く覚えていることがあります。

一方で、ちょっと嬉しかったことや、普段してもらっていることは、日常の中に溶けてしまいやすい。

だから、つなつむ。では、できれば「よかったやりとり」を残してほしいと思っています。

後から見返したとき、

「そういえば、こんなこともしてもらってたな」

と気づけるだけでも、少し日常の見え方が変わるかもしれません。

自分が誰かにしたことも残してほしい

もちろん、「してもらったこと」だけではありません。

自分が誰かにしたことも同じように残します。

家事をした。

話を聞いた。

送ってあげた。

少し手伝った。

本人にとっては大したことではなくても、誰かの生活の一部になっていたかもしれません。

ふと、

「自分って何のために生きてるんだろう」

と思う日があったとして。

過去の記録を見て、

「あ、自分も誰かに何かしてたんだな」

と思えることがあるかもしれません。

してもらう側だけでもない。

してあげる側だけでもない。

人って、たぶんずっと「お互い様」です。

貸し借りを記録するアプリとも言える。それでもいい

つなつむ。は結局、人との貸し借りを記録しているだけでは?

そう言われれば、そういう部分もあると思います。

でも、それでもいい。

人間って、お互い様だから。

大切なのは、貸し借りをゼロにすることでも、完全に精算することでもありません。

「思っていたより、いろんなことをしてもらっているな」

と気づいたり、

「自分も誰かに結構いろいろしているな」

と気づいたりする。

まずは、それだけでいいと思っています。

その結果、

「今度は自分がご飯を出そうかな」

「今日は自分が家事をしようかな」

「ありがとうって言っておこうかな」

そんな小さな行動が自然に生まれたら嬉しい。

でも、それをアプリから強制することはしたくありません。

まずは恋人や家族に使ってほしい

最初に使ってほしいと思っているのは、恋人同士です。

一緒にいる時間が長くなるほど、

何かをしてもらうことも、

何かをしてあげることも、

少しずつ当たり前になっていくからです。

同じ理由で、家族にも合うと思います。

友達との出来事を残してもいい。

そして、つなつむ。で考えている「世界」は、それよりもっと広いものです。

たとえば、たまたま親切にしてくれたコンビニの店員さんでもいい。

名前を知らない人でもいい。

ほんの一瞬しか関わっていない人でもいい。

親しい人だけが、自分の世界を作っているわけではありません。

自分が生きる中で少しでも触れた人たち。

そういう人たちまで含めたものを「世界」と考えています。

「自分って、案外ひとりじゃない」と気づけたら

つなつむ。をしばらく使って、昔の世界を見返したとき。

「あの頃、この人によく助けてもらっていたな」

と懐かしくなるかもしれません。

「当たり前だと思っていたけど、結構いろんなことをしてもらっていたんだな」

と気づくかもしれません。

そして、自分が誰かにしてきたこともそこに残っています。

それを眺めながら、

「自分って、案外ひとりじゃないんだな」

と思えたらいい。

そしてもう少しだけ、

「自分も、この世界にいる一人なんだな」

と思えたら、もっといい。

アプリが「生きる意味」を教えることなんてできないと思っています。

でも、

自分が誰かから何かを受け取り、

自分も誰かに何かを渡しながら暮らしている。

その事実が見えたとき、

「自分も誰かと関わりながら、ここで生きているんだな」

と思えることはあるかもしれません。

「つなつむ。」という名前について

つなつむ。という名前には、

「つながりを紡ぐ」

という意味を込めています。

昨日してもらった小さなこと。

今日、自分が誰かにしたこと。

名前も知らない人との、ほんの短いやりとり。

そうしたものを少しずつ残していく。

すると、いつの間にか、その記録が自分だけの世界になっていきます。

あなたの毎日にも、思っている以上に、人との小さなつながりがあるかもしれません。

「つなつむ。」が、それに気づくきっかけになれたら嬉しいです。